いかなる住処にも、そこに暮らした人の「生きた証」が刻まれている。たとえ住処そのものが、この世から姿を消そうともー。
終戦の年に生まれ、高度成長期やバブル景気を経て、平成に沸き起こった建て替え騒動へ。激動の時代をくぐり抜けた筆者の記憶には、常に「阿佐ヶ谷住宅」があった。本書にはレトロシックなお洒落ライフや、アカデミックな建築談義はない。記されているのは、ただただ精一杯なりふり構わず生きてきた日々の出来事。名もなき一市民だからこそ語り得た生身の阿佐ヶ谷住宅。それは誰の心の中にもきっと、ある。
著者:櫛山英信。1945年生まれ。東京都杉並区の阿佐ヶ谷住宅が新築だった1958年に入居し、建て替えに伴う解体がはじまる直前の2013年に退居。本書は著者の半生記であり、阿佐ヶ谷住宅建て替えの当事者視点でのレポートでもある。